フッ素はむし歯予防に効果がある薬剤として広く利用されていますが、過剰摂取によるリスクについて心配する声もあります。
この記事では、フッ素の安全性についての観点から、歯牙フッ素症や急性中毒について詳しく解説します。
目次
■フッ素とは?
◎フッ素について
フッ素は、歯の表面のエナメル質を強化し、むし歯の原因となる酸への抵抗力を高める働きがあります。
歯みがき粉やうがい液、歯科医院でのフッ素塗布など、さまざまな形で利用されています。
フッ素は適切な量を守ることでその効果を安全に引き出すことができます。
日常生活での使用は、管理された基準内で行われており、過剰摂取のリスクは低いとされています。
■フッ素の慢性中毒
◎歯牙フッ素症
歯牙フッ素症は、6ヶ月頃から5歳頃までに過剰なフッ素を摂取することで歯のエナメル質に異常が生じる状態です。
フッ素が過剰に作用することでエナメル質の形成が影響を受け、歯の表面に白斑や褐色の変色が現れる場合があります。
◎骨フッ素症
長期間にわたって高濃度のフッ化物を摂取し続けると、骨に影響が現れることがあります。例えば、フッ素濃度が8ppmを超える水を20年以上飲用していると、骨に変化が見られることが報告されています。
初期の段階では、レントゲン撮影時に変化がみられる程度ですが、さらに過剰な摂取が続くと、手足の動かしにくさや痛み、筋肉のこわばり、異常な骨の形成などが生じる可能性があります。
ただし、これらの重い症状は非常に稀です。
■急性フッ素中毒とは?
◎急性フッ素中毒の症状と原因
急性フッ素中毒は、短期間に大量のフッ素を摂取した場合に起こります。
嘔吐、下痢、ひどいケースではけいれんを伴うこともあります。
体重1kg当たり2mg~5mg程度で発生するとされています。
大人用のフッ素入り歯みがき粉(1000ppm)だと、20㎏の幼児は10g程度を一気に飲み込むと急性中毒の危険性があります。
家庭用歯みがき粉だけでなく、フッ素洗口液などを誤飲した場合に起こる可能性があります。
一気多くの量をに飲み込めば、家庭にある歯みがき粉でも十分中毒になるリスクがあるため注意が必要です。
※日本小児科学会|フッ素入り子ども用歯磨剤の誤食による急性フッ素中毒疑い
◎誤飲してしまったら
歯みがき粉や洗口液を明らかに大量に誤飲してしまった場合は、速やかに医療機関を受診することが必要です。
■歯科で使用されるフッ素の安全性
◎歯科のフッ素塗布の特徴
歯科医院で行われるフッ素塗布は、専門的な知識を持つ歯科医師や歯科衛生士が適切な濃度と量で行います。
このため、過剰摂取や中毒のリスクはほとんどありません。
■フッ素中毒を防ぐための注意点
◎適切な使用
歯みがき粉の使用量は、3歳未満では米粒大、3歳以上はエンドウ豆大が目安です。
また、こどもが歯みがき粉を飲み込まないよう、歯みがき中はおとなが見守るようにしましょう。
◎歯科医師との連携
フッ素の使用に不安がある場合は、歯科医師に相談してみましょう。
特にこどもの場合、フッ素塗布の頻度や方法を相談しながら進めることで、安心してむし歯予防に取り組めます。
【使用方法を守ればリスクは低い】
フッ素はむし歯予防において非常に有効であり、適切な使用を行えば安全といえます。
歯科で行われるフッ素塗布や日常的なフッ素製品の使用は、厳しい基準のもとで行われており、過剰摂取や中毒のリスクは低いです。
ただし、小さなこどもにおいては、誤飲による過剰摂取を防ぐための配慮が必要です。
また、慢性のフッ素中毒を防ぐためにも、使用量を守り、正しい管理を行うことが大切です。
不安がある場合は、歯科医師に相談してアドバイスを受けましょう。