
目次
口が開いている横顔と夜のいびき、気になり始めたら
宿題のプリントに向かうお子さまの口が、いつの間にか開いている。夜は寝室からいびきが聞こえる。学校写真で前歯の重なりに気づくと、これらがつながっているのか気になりますよね。口呼吸は歯並びに関わる要因の一つですが、それだけで歯並びが決まるわけではありません。鼻呼吸との違い、家庭で見ておきたいサイン、耳鼻咽喉科と歯科への相談の分け方を順に整理します。
この記事の要点まとめ
- 口呼吸は舌や唇の位置を通じて顎の成長や歯並びに関わる可能性がありますが、歯の重なりには複数の要因があります。
- 口が開く場面や鼻づまり、いびき、睡眠中の呼吸、翌日の様子を記録すると、受診時の相談に役立ちます。
- 鼻づまりやいびきは耳鼻咽喉科、前歯の重なりや噛み合わせは歯科へ相談し、成長や生え替わりを踏まえて方針を検討します。
鼻呼吸と口呼吸の違いは、歯並びにどう関わる?

口呼吸が続くと舌や唇の位置が変わり、顎の成長や歯並びに関わる可能性が研究で報告されています1。ただ、お子さまの前歯の重なりを口呼吸だけのせいと決めることはできません。
鼻で息ができるとき、舌と唇はどう使われる?
鼻で息をしているとき、唇は軽く閉じ、舌は上あごに沿うように収まっています。舌が内側から、唇や頬が外側から、ほどよい力で歯列を支えている状態です。
口で息をすると、唇が開いて舌は下がりがちに。口の中が乾きやすくなり、口臭や歯ぐきの腫れが気になることもあります。鼻を通らない乾いた空気がそのまま喉に届くため、風邪をひいたときに喉を痛めやすいと感じる保護者さまもいます。
口呼吸が続くと前歯や顎に影響する?
子どもを対象にした研究をまとめた報告では、口呼吸と顔の骨格の発育や噛み合わせとの関連が示されています1。舌が上あごを内側から支えにくいと横幅が広がりにくく、前歯の並ぶすき間が足りずに重なって見えることがあります。
ポイント
口呼吸と顎の発育の関連は報告されていますが、目の前の前歯がどの理由で重なっているかは、診察してはじめてわかります。
「口呼吸なら歯並びが悪くなる」とは限らない
歯並びには、歯と顎の大きさのバランス、乳歯から永久歯への生え替わりの順番、遺伝、成長の個人差などが重なって関わります。小学1年生ごろは前歯が生え替わり始める時期で、永久歯の前歯が一時的に重なって見えることも珍しくありません。
当院では、口元の印象だけで矯正の要否を決めず、お口全体と成長の様子を見てから考えることを大切にしています。
お口ポカンといびき、家庭では何を確かめる?

日中と就寝中を分けて、口が開く場面と鼻の様子をメモしておくと、受診先での相談がぐっと具体的になります。病名を家庭で判断する必要はありません。
宿題中と就寝中で、口元の様子を見分ける
観察するときは、次のような点を1〜2週間ほど書き留めておくと整理しやすくなります。
- 日中:宿題、テレビ、ゲームなど、口が開くのはどんな場面か
- 鼻:鼻づまりが続く時期(花粉の季節、風邪のあとなど)
- 就寝中:いびきの頻度、口を開けて寝ていないか
- 呼吸:眠っている間に息が止まるように見えないか
- 翌日:朝の口の乾き、日中の眠気や集中しにくさ
マスクを着けている時間帯や外したあとの口元の様子も、気になる場合は見ておくと参考になります。
鼻づまりやいびきが続くなら耳鼻咽喉科へ
鼻の通りにくさには、アレルギー性鼻炎や、アデノイド(鼻の奥にあるリンパの組織)・扁桃の腫れなど複数の可能性があり、見た目だけでは区別がつきません。いびきがほぼ毎晩続く、息が止まるように見える場合は、耳鼻咽喉科に相談しましょう。
アデノイドや扁桃の手術後に上あごの成長に変化が見られたという研究のまとめもあります2。ただし治療が必要かどうか、成長にどう関わるかは一人ひとり異なり、耳鼻咽喉科の医師が判断します。
鼻の通りを確かめる前に、口を無理に閉じさせない
鼻で息がしづらいまま口をふさぐと、呼吸が苦しくなるおそれがあります。就寝中に口へテープを貼るなどの固定は、鼻の状態を確かめるまで控えてください。
舌や唇の練習は、矯正と組み合わせて口呼吸や舌の位置の改善を目指す方法として研究されていますが、根拠はまだ十分とはいえない段階です3。「口を閉じて」と何度も声をかけるより、まずは記録を手に相談するほうが、お子さまにも保護者さまにも負担が少なく済みます。
ポイント
順番は「鼻の通りを確かめる」が先。口を閉じる練習は、そのあとで歯科と相談しながら進めます。
前歯の重なりはいつ歯科へ相談する?
前歯の重なりや噛み合わせが気になった時点で、歯科へ相談して構いません。鼻の症状は耳鼻咽喉科、歯並びや口の使い方は歯科と、役割を分けて考えると迷いが減ります。
前歯の重なりや噛み合わせが気になったとき
前歯が重なる・ねじれている、上下の前歯が噛み合わない、上下の歯が左右にずれている、歯のすき間が大きいといった様子は、歯科で相談できる内容です。いびきや鼻づまりも気になるなら、耳鼻咽喉科と歯科の両方へ相談してよく、どちらを先にするかに決まりはありません。
顎の成長や生え替わりを見て、相談の時期を考える
顎の成長がいつ止まるかは一律ではなく、上あごと下あごでも成長が進む時期に差があります。歯科では生え替わりの進み具合や、レントゲンで見える永久歯の位置も確かめながら、相談や経過観察の時期を考えます。
「頬杖で顎が伸びるのでは」と心配される声も伺います。頬杖だけで顎の形が決まるとは言い切れないものの、姿勢や癖の一つとして伝えておくと診察の手がかりになります。
矯正や口の筋肉の訓練は、何を見て決める?
小児矯正や口腔筋機能療法(MFT:舌や唇の使い方を整える練習)は、口の状態、成長度合い、鼻の症状を合わせて検討するものです3。小児矯正を検討する際は見た目だけでなく成長全体を考え、悩みや希望を伝えたうえで、口腔内検査やレントゲン、口腔内写真などをもとに計画の説明を受け、納得してから判断することが大切です。
小児矯正は多くが自由診療(健康保険が使えない診療)です。永久歯が生えそろう前に行う小児矯正(いわゆる第1期治療)の期間や通院頻度、費用は、お口の状態や治療内容によって異なります。検査・診断料と装置料、毎回の調整料を合わせた総額については、歯科医師にご相談ください。その後、永久歯がそろってから本格的な矯正(第2期治療)が必要になると、別に期間と費用がかかります。口腔筋機能療法は、矯正の費用に含める医療機関もあれば、1回ごとに費用を設けている医療機関もあります。自由診療として別に費用を設ける場合も、1回ごとの費用や通院頻度、期間、総額は医療機関やお口の状態によって異なります。詳しくは歯科医師にご相談ください。ご家庭での毎日の練習が前提となり、練習を続けにくいと期間が延びることがあります。なお、お口の機能の発達に関する条件にあてはまる場合は、健康保険の範囲で練習の指導を受けられることもあります。費用や期間には個人差があり、当院の費用は診察のうえでご案内します。
小児矯正では、次のような副作用やリスクが起こることがあります。
- 痛み・違和感:装置を着けはじめたときや調整のあとに、歯が浮くような痛みや締めつけ感が数日続くことがあります
- 話しにくさ・食べにくさ:装置に慣れるまで、発音しづらい、食べにくいと感じることがあります
- 口の中の傷:装置が頬や舌、歯ぐきに当たり、口内炎や傷ができることがあります
- むし歯・歯ぐきの炎症:装置のまわりに汚れがたまりやすく、歯みがきが不十分だとむし歯や歯肉炎が起こりやすくなります
- 歯の根や歯ぐきへの影響:歯の根の先が丸くなる(歯根吸収)ことがあります4
- 計画どおりに進まないこと:取り外し式の装置は使う時間が足りないと、期間が延びたり想定どおりに歯が動かなかったりすることがあります
- 後戻り・追加の治療:治療後に歯並びが元に戻ろうとすることがあり、成長の仕方によっては第2期治療が必要になることがあります
歯科相談で伝えたい観察メモ
受診の際は、口が開く場面、いびきや鼻づまりの時期と耳鼻咽喉科の受診の有無、学校写真などで気づいた前歯の変化、歯科への不安を伝えてください。お気に入りのぬいぐるみを持っていきたい場合も、予約時に確認しておくと当日が落ち着きます。
当院にはキッズルームと個室・半個室の診療室があり、専用駐車場は11台分です。診療時間は変更になる場合がありますので、アクセスページでご確認ください。
口元の癖に気づかなかったとご自身を責める必要はありません。私は、気づいた今こそ相談のきっかけだと考えています。メモを1枚持って、私たちと一緒にお子さまの成長を見守っていきましょう。
よくある質問
Q. 鼻呼吸は何歳ごろからできるものですか?
A. 赤ちゃんはもともと鼻で息をすることが多く、成長とともに口でも息ができるようになります。鼻呼吸は特定の年齢から練習して身につけるものというより、鼻の通りや舌・唇の使い方が整っているかがポイントです。口が開いている時間が長いと感じたら、鼻の状態とあわせて相談してください。
Q. 耳鼻咽喉科と歯科、両方に行く必要がありますか?
A. 鼻づまりやいびきが続くなら耳鼻咽喉科、前歯の重なりや噛み合わせが気になるなら歯科と、気になる内容によって相談先が変わります。両方が気になる場合はそれぞれ受診して構いません。受診した先で伝えられたことを、もう一方にも共有するとスムーズです。
Q. マスクをしていると口呼吸になりやすいですか?
A. マスクの着用だけで口呼吸になりやすくなるとは言い切れません。着けている時間帯や外したあとの口元の様子を観察し、気になる場合は相談の際に伝えてください。
Q. 頬杖をしていると顎が伸びますか?
A. 頬杖だけで顎の形が決まるとは言い切れません。ただ、姿勢や癖は歯並びを考えるうえでの手がかりになるため、普段の様子として歯科医師に伝えていただくと診察に役立ちます。
Q. 小児矯正や口の筋肉の訓練には、どのくらい費用や期間がかかりますか?
A. 小児矯正は多くが自由診療で、装置の種類や開始時期、お口の状態によって費用も期間も変わります。一般的には、第1期治療で期間1〜3年程度、通院は1〜2か月に1回程度、総額20万〜60万円程度と紹介されることが多いです。口腔筋機能療法は矯正の費用に含める医療機関もあり、別に費用を設ける場合は1回あたり3,000〜1万円程度、月1〜2回程度の通院で数か月〜1年程度、総額数万〜十数万円程度が一般的な目安です。これらは一般的な相場であり当院の費用ではありません。当院の費用は診察のうえでご案内します。装置による痛みや違和感、口内炎、むし歯や歯肉炎、後戻りなどのリスクもあるため、検査内容や見通しとあわせて確認してください。
参考文献
1. Zhao Z, Zheng L, Huang X, et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2021. PMID: 33691678 / DOI: 10.1186/s12903-021-01458-7
2. Xu L, Zhang Y. Meta-analysis: effects of adenoidectomy/tonsillectomy on pediatric maxillary growth development. The Journal of Clinical Pediatric Dentistry. 2024. PMID: 39543880 / DOI: 10.22514/jocpd.2024.124
3. Koletsi D, Makou M, Pandis N. Effect of orthodontic management and orofacial muscle training protocols on the correction of myofunctional and myoskeletal problems in developing dentition. A systematic review and meta-analysis. Orthodontics & Craniofacial Research. 2018. PMID: 30152171 / DOI: 10.1111/ocr.12240
4. 矯正歯科 | 東京歯科大学 水道橋病院. https://www.tdc.ac.jp/sh/treatment/departments/dental/orthodontics/
愛知学院大学歯学部卒業
西川歯科医院勤務
西川歯科医院 院長
国際歯周内科学研究会会員
あわせて読みたい関連記事
